転換期にあるPCサポート業界

 PCサポート業界先行きは暗いのか?

かつては、何か新しいことや自分が体験したことのないことをしようとすれば、その方法を自ら探さなければならなかった。試行錯誤して何度も失敗しながら答えを見つけたり、図書館に行き参考書を読んだり、専門家にお金を払って学んだり。

そうして習得した知識や技術を持つことで、その道のプロとして看板を掲げて「業」とすることができた。

それが今はどうだ。知りたいことの答えのすべてはスマホの中にある。極端な話、農業の始め方も載っているし、家の作り方も調べられる、飛行機の操縦方法だって知ることができる時代だ。

「サポート」――この言葉を辞書で調べると、支える、支援するという意味になる。

PCサポートやITサポートとは何を支え、誰を支援するのだろう?インターネットの接続設定のことか、ネットワークプリンタの接続か、機器に何らかの不具合が生じたときのそのトラブルの切り分けか。それともオフィスソフトの使い方を教えるのか。

そのいずれにしても、現時点でその問題を解決するためには極端な専門性を有している必要はほとんどない。

スマホにHey Siriとか、OK Googleと尋ねてみれば、その答えは(信憑性はともかく)山ほど出てくる。そのリファレンスに従って設定を行えば、9割以上は問題なく作業が完了する。

PCサポート業者も、その多くが、ネットの検索機能を使って類似トラブルを調べ、状況を判断しているに過ぎない。説明書どおりに設定してもうまく動かないようであれば、それは相性問題や機器不良として、メーカーへの修理を案内するだけだ。

まれに高齢者の客先で「PCに詳しいのですね~。どこで学んだのですか?たくさん勉強したのでしょうね。」と聞かれることもあるが、本当にこそばゆい。「いや、ついさっきネットで調べたのですよ」とはなかなか言えない…。

こう考えるとPCサポート業の未来は「今のままでは」とんでもなく暗く将来性の無い業界と言わざるを得ないと思う。

 

 修理業界も同様のことが起こりつつある 

店舗を持ち、専門の機器や測定器などを有し、データサルベージなど特殊性の高いサービスを提供している場合等はすべてに該当するわけではないが、修理業界も大きな岐路、転換期にあるのではないかと思う。

端末内部はブラックボックスとなり、これまでは簡単に交換・増設できた部品さえもオンボードでアッセンブル化され、仮に壊れている部品を特定できたとしても、それを交換・修理することが難しくなってきた。

また、ハードウエアの保証について、これまでの「メーカー保証1年」という形から、メーカーや販売店での3~5年に亘る充実した長期保証を行うケースが多くなってきたことも修理を難しくしている。

保証期間内であれば、そもそも端末を分解してしまうと、その時点で保証が切れてしまう。保証期間後であっても、結局アッセンブル交換となれば、その費用も高額になり、費用対効果の面で、本当にそれが正しい修理方法なのか疑問も出てくる。

修理可能なPCは、自作系などになるが、自作PCを扱う方は既に相応のスキルを有しているとも思われ、修理を依頼するという数は決して多くは無いだろうということは想像に難くない。

となると修理業といえども、できることと言えば、PCサポート業と同じように、まずは、誤った操作方法を行っていないか、ソフト側の設定ミスはないか等を確認し、それが問題なければ機器不良としてメーカーへ修理依頼・・・となっている場合が多いのではないだろうか。

 

 企業でのIT利用。情シス担当者の役割

ある意味、PCやIoT端末を取り巻く環境は成熟してきたのかもしれない。個々の機器については、スイッチオンで即稼働…というわけにはいかないまでも、誰でも説明書を見ながら設置・設定を行うことができるようになった。確かにIT系の言葉はカタカナや略語が多くとっつき難い面もあるが、それでも、これまでに比べると極めて簡単になった。Windowsは「10」となりOSの安定性も増した。一般家庭で趣味として使うなら、これで十分だ。なんの問題もない。ただし、企業でこういった情報端末を扱うとなると、もう少し押さえておかなければならないポイントがある。

それは、ハードやソフト、システムを含めた全体の構成を客観的に把握し、各機器の用途やサービスが何のために存在し、何が何と繋がって、どのようなルートでデータが流れているか。等という確認である。

「ひとり情シス」というワードを最近よく目にする。ハードウエアの導入からシステムの運用、日々のPCのメンテまで「一人」でその業務(あるいは他業務と兼務で)を担当している場合にこう呼称することが多い。

IT化はそれ自体が利益を生むものではないため、経営側としてもそこに「システム運用のための専任者(いわゆる固定費)」を確保することができず、誰かPCに詳しい人にその業務「も」任せてしまうのだ。これはとくに中小企業や団体で多く見受けられる。その結果、さらに無秩序、無計画にシステム化されてしまうことで、その運用コストが大きく嵩み、せっかく積み上げた利益を「システム化という経費」によって押し下げてしまうという悪循環に陥ってしまう。

本来、IT導入の目的はシステム化することで業務改善ができ、そこでコスト削減や売上高を拡大していくものなのだが、計画性のないITの導入や利用者を無視したシステム作りはITが存在すること自体が負担になるという残念な状況が起こる。

ひとり情シスという立場では経営側に意見することは難しいことだと思うが、であるならば、日々の情シスとしての負担をなるべく軽減させることを目指したい。そのためには、先に記載した全体像の把握が必要となる。

有線ルーターの先に無線ルーターが繋がっていて意図せず多段ルーターになっているなど、現状をさっと確認するだけでも、トラブルを起こしそうな問題点を事前に把握することができるようになる。これは結果的に設備の無駄を省き、よりシンプルでトラブルが少ない、すなわち管理しやすいシステム構築にも繋がっていく。

ただ、そのためには、PCやネットワーク、セキュリティなどの基本概念を浅く広く習得しておくことが必要だ。

 

 サポート業界、修理業界の未来は暗くない

かといって、ずっと「ひとり情シス」のまますべてをこなしていくのは大変なことだ。やはり誰かに相談できる環境があるといいだろう。上に例をあげた「ルーターにルーターを繋げてしまう多段ルーター環境」自体は、正しい知識とルーターを多段化しなければならない明確な理由・目的があれば、必ずしもすべて間違いというわけでもない。

そこで、サポート業、修理業を営んでいる方には是非こうした企業をサポートして欲しいと考える。企業として現状で困っていることは何なのか、これから何をどう効率化したいのか、そうした課題について、単純に新しい機械を導入して「はい終わり」、ではなく、トータルで業務改善ができるよう、例えば、コスト試算、保守、人材教育、セキュリティさらにはその次のステップまで含めて考え、総合的に「小回りの利いた企業に寄り添ったコンサルティング」を行えるとすれば、そのニーズは多く、サポート業界の未来も明るいのではないか。

 

 パソコン整備士協会スキルアップセミナーを活用しよう

実際にコンサルティングを行うとすれば、私達も日々勉強を怠ってはいけないし、積極的に新しい技術やサービスについて理解を深めておくことも必要になる。加えて様々な業種、業界のことを知っておくとそれらが新しいアイデアにも繋がる。

パソコン整備士協会のスキルアップセミナーでは、そのあたりも含めてより実践的な講座を定期的に開講している。ハード、ソフト、セキュリティ、サーバー、法律等、体系的に学べるので一度自身の情報を整理してみるために受講してみるのもいいかもしれない。小人数の講座ゆえ参加者同士の発言も多く、異業種の話を聞けることもメリットの一つだ。

サポート業界や修理業界に身を置く方、そしてひとり情シスとして企業で奮闘されている方などはぜひ受講してみてはいかがだろうか。

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